第六十九話再会と風流人鬼と化す

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山賊達が雑魚寝している部屋… 幹部らしい人物が居るのか、厳重にされており…常に見張りが居る部屋… 横目で見ながら、細川は遂に刀剣の気配がする部屋へ入った。 足を踏み入れた途端、目前に拡がったのは所狭しと並べられた盗品の数々。 商人から奪った陶器や掛け軸…武家から奪った名刀… 血が付着した小判や銭…銀貨や高価な反物… 細川が探していた盗まれていた反物もあった。 その中から… 『ぐすんっ…ぐすんっ…僕が…九十九神に成れないから…せっかく再会出来た主が…ぐすんっ…えっぐ…』 奥から啜り泣く泣き声が聞こえてくる。 ……この声は…… 細川は確信すると…思わず奥へ突っ込んでいく。 刀の山の更に奥を駆け抜けると… ピカピカ光る太刀が現れた。 …見つけた…これが… 安堵して細川は太刀に向かって駆け寄ろうとしたが… 『うわっ!?狐っ!?』 突然太刀は細川に気付いて叫ぶ。 『九十九神じゃないのに…お前見えているのか?』 びっくりして細川は立ち止まった。 『…狐が喋った?』 細川が喋った事に太刀はびっくりする。 『狐じゃない…管狐だ。それより…貴様…太刀なのに何故俺が見えて言葉を話している?』 苦笑して細川は問い掛けた。 『…分からない。長い年月を経て…気付いたら人語を話せるようになっていた。 …視界も見えるようになったのだ』 恐々と太刀は細川に答えた。 ……歌仙が言っていた刀剣になる初期段階か… 細川はハッとして気付いて思わず息を飲む。 『忠興。良く聞いてくれ…。僕達刀剣には九十九神になる段階があるらしいんだ』 ある昼下がり。 歪んだ戦国の世。 屋敷で茶を飲んでいた細川に歌仙は言った。 『九十九神になる段階だと?』 聞きなれない事に忠興は湯飲みを置いて聞き返す。 『あぁ。最初は刀の状態で自我が生まれる。 次に視界が見えるようになるんだ』 湯飲みに視線を落とし、茶柱をみつめながら歌仙は答えた。
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