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『良し、…ならば…まず、お前に俺が霊力を与えてやる。
そして気合いで人間の姿になれ』
ニッコリ笑うと細川は、右前足を太刀に向かって翳す。
『は?気合いで人の姿になれだと!?』
びっくりして太刀は叫ぶが…
『お前の兄達…髭切と膝丸は凛々しくて強い。
源氏の名を持つお前は出来ないのか?』
嘲笑うように細川は挑発する。
『何!?貴様兄上達を知っているのかっ!?』
びっくりして太刀は叫ぶ。
『知っているも何も…二人は俺達の仲間だ。勿論…お前の主もな』
笑って細川は答えると尻尾を揺らす。
『…俄には信じがたい…が、主を殺した憎き山賊の元へなど…これ以上長居などしたくない。
…お前に賭けて見よう。宜しく頼む』
疑い深そうに太刀は言うと細川に頼んだ。
『…そう来なくてはな!』
笑うと、細川は霊力を右前足に溜めながら徐々に太刀に注ぎ込む。
パアアアアッ
太刀が光り輝き凄まじい霊力が放出する。
『!』
眩しくて細川も尻尾で顔を隠す。
太刀の姿が桜の花弁に代わり、赤ピンク色のジャケットと黒いジーンズを着た桃色の長い髪の可愛らしい少年の姿に変わった。
『成功…か?』
光が無くなり、目を開けた細川は太刀の姿を見て頷く。
「これが…人の姿…か」
自分の両手や足、身体を見て太刀はびっくりする。
『良し、では改めて…顎丸、宜しくな』
笑って細川は顎丸に小さな前足を差し出した。
「…狐ごときが偉そうに…ふん」
あからさまに嫌そうな態度を示しつつも、満更では無いのか…顎丸も細川の前足を握り握手した。
同じ頃…
廃墟の奥の座敷では…
「ふふ…」
横たわった無精髭の男を見て、美しい青年は裸のまま怪しく微笑む。
無精髭の男からは…死人の臭いがする。
伝五郎。
名ばかりの山賊の頭領。神子田により処刑された後復活させられた。
男を好み、神子田を気に入って側に置いている。
「…さて…」
行為の最中、無精髭の男に脱ぎ捨てられた自分の白い着物に袖を通す。
紫色の長い髪、何処か危険な香りを漂わせる美しい青年は顎に手を当てた。
神子田正治。
元豊臣軍軍師で、秀吉に失態を叱責され逆に激怒し出奔。
秀吉から追放され流浪の末に離れ小島で処刑された。
……丘から感じる軍勢の気配…しかし、光國と斉彬が持つ天狗党以外に…常陸に軍があったか?
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