第六十九話再会と風流人鬼と化す

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ビクビクビク 「ん…はぁ…」 半次郎に仕込まれたせいで、神子田の感度は敏感で涙を流しながら甘い吐息を漏らす。 ギシッギシッ… パンッパンッパンッパンッ 「あっ!あぁっ!んやっ!ひやあっ!」 その部屋からは激しく畳が軋む音と水音、神子田の甘い声が響くのだった。 『さてと…顎丸が無事に人の姿を得たなら退散するのみ…』 細川は顎丸に言うと…目を瞑り… パアアアアッ 光輝くと、細川は人の姿に戻った。 「…人になった?」 びっくりして顎丸は目を丸くする。 「逆だ。俺は元々人間…死んだ後…修行して管狐になったんだよ」 呆れた顔をして細川は顎丸に言う。 「そうか…人間か…。名は何と言う?知っていると思うが…俺は源氏の幻の重宝…顎丸だ」 改めて顎丸は細川に名乗る。 「俺は細川忠興。かつて戦国の世で刀を奮っていた武将だ」 苦笑して細川も名乗った。 「成程…武将だったのか。見た目では分からぬものだな」 意外そうに顎丸は目を丸くする。 「俺の父は風流人の大家だからな。俺も風流について嗜んでは居るが…父程じゃない。 専ら剣の腕で家族を守り…乗し上がって来たんだ。 …しかし、大切な妻を守る事は出来なかったがな…」 顎丸に説明しながら、細川は玉が石田三成によって包囲され… 人質となり夫の枷と成るのを嫌い京の屋敷で自害した事を思い出し…悲し気な表情で言葉を逃がした。 「…俺も分かる。一度成らず二度までも…俺が九十九神に成れなかったせいで…主を死なせてしまった。 だから…お前の言葉を信じて主と再会し御詫びしたい…」 共感して顎丸も涙ぐみながら細川に頷いた。 「…似た者同士…か。それも悪くないな…」 「…そうだな」 細川と顎丸は顔を見合せ、何とも言えない複雑な表情になった。 「それじゃ逃げるぞ。此処へ来る途中…人の出入りが無い裏口を見つけた。 そこから出れば逃げられる筈だ」 クスッと笑って細川は背を向けた。 「…了解した」 細川に顎丸も頷くと… 二人は見張りが少ない部屋や廊下を…出来るだけ気配を殺して進み…目的地である裏口へ着いた。
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