第七十話水戸語りと新撰組の鴉

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「…繁光、貴様は楽な発想で羨ましい…。 俺とて…能天気な頭ならどれほど良かったか…」 溜め息をついて芹沢は繁光に苦言すると頭を抱えた。 「…余裕無い鴨はん…」 「初めて見た…」 梅と繁光は顔を見合せた。 数時間後… 謁見の間にて三つ葉に通され、三人は座ると厳粛な気持ちで待たされる。 ……水戸城…… ……水戸の殿様の先祖やから…殿様の殿様やな? 繁光と梅は目配せし合う。 「待たせたな」 そこへ、正装を着た光國が三つ葉と共に部屋へ入って来た。 美しい女性が三人…膳を持って来ると三人の前に置く。 ……なんや…美しい娘や……芸子はんか?いや…水戸大奥の腰本さんか? 去り行く三人を見て梅は目を丸くする。 「気になるか?鴨の奥方よ…」 「っ!?」 光國に言われ梅は目を丸くした。 「残念…あれらは男だ。わしの忍と助手なんでな…」 笑って光國は口元に閉じた扇を当てる。 「なっ!?男っ!?ほんまどすかっ!?あないに御綺麗やのにっ!?」 びっくりして梅は思わず声を上げる。 「こら…梅…光國様に何たる無礼を…」 慌て芹沢は梅を嗜める。 「あら嫌だ…うちったら…もっ申し訳ありまへんっ!!どうか御堪忍しておくれやすっ!!」 慌て梅は頭を下げて光國に謝る。 「…妻の御無礼…平に平に御容赦を…」 芹沢も頭を下げて謝る。 「よいよい。わしはソフトな感じが好きじゃ。 芹沢並びに奥方よ…面を上げ楽にせい」 笑って光國は二人に命じる。 「「はっ…」」 光國に命じられ、二人は恐々と顔を上げた。 「山崎から知らせは聞いてると思うが…山賊と愛奈達が一戦交えるらしい。 土方ら新撰組と源氏等も居るから心配ないと思うが…」 目を細め、光國は話を切り出した。
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