第七十話水戸語りと新撰組の鴉

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水戸徳川家の駕籠に送られ、家に着いた三人は… 「…」 「…」 梅と繁光はじぃーっと、芹沢を見詰めている。 「…なんだ?」 不愉快そうに芹沢は尋ねた。 「…土方はんらに殺されたんやから…恨みもごっつうあると思うてましたんやけど…案外芹沢はんは御優しゅう好い人やなぁって思うてましたんや」 珍しそうに梅はぽつりと言う。 「…俺も…だって気位が高い鴨が背中の傷を受けて死んだんだぜ? そりゃ恨んでるって思うっしょ?」 繁光も力強く頷いて力説する。 「お前らな…ったく…恨んでないと言えば嘘になる。 だが、愛奈が居るなら話は別だ。 …愛奈を守ると考えれば自ずと手を差し伸べねばなるまいて」 少し顔を赤らめながら言うと、芹沢は先に家の中へ入って行った。 「…なぁ…繁光はん?」 「梅?なんだ?」 「芹沢はんは…あないに怖い顔でいてはりますやから…確かに性格も不器用だと思います。 そやけど…根は優しゅう人でおりますえ。 …土方はんらに芹沢はんの人柄を分かって頂けたら…運命も変わりましたやろかって思うて叶わんどす」 寂しそうに梅は繁光に言った。 「あの幕末の京では…派閥争いが常だった。 …理解したとしても、土方は殺しただろうさ」 苦笑して繁光は梅に言うと空を見上げる。 叩き付ける長い雨。 稲光と共に立ち尽くす沖田と土方… 倒れて動かない鴨と梅… 俺は何も出来なかった… 見てるしか出来なかった… 土方と沖田は泣いていた。 慕っていたのは知っていたよ。 「俺は嫌だよ…あんな斬り合う悲しい結末はさ」 ポツリと繁光は呟く。
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