第七十話水戸語りと新撰組の鴉

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「…やっぱり予見していた通り…死人か…」 厚と女性?から報告を受け武市は難しい顔をして考え込む。 女性?は、艶やかな姿から一変、短髪に忍装束を着た青年の姿に変わっていた。 山崎丞。 生前は新撰組監察方として、土方の命令で諜報活動や、潜入調査を主としていた。 …戊辰戦争の際に、土方を庇って射たれ海に埋葬された。 今は、土方と光國、坂本の命令で動いている。 「…死人だと手応えねぇから微妙だぜ」 山崎の隣で、黒い軍服姿の少年が胡座を掻いて座っている。 厚藤四郎。 粟田口の短刀の刀剣で、鎧通しに分類されている。 薬研、後藤、信濃、乱と同じく短刀の中で年長組。 「……しっかし…鉾田に死人が居たっちゅう事は…水戸も危ないぜよ。 恐らく光國様達の近くにも居ると考え相違なか…」 坂本も、相変わらず頭に地蔵のぬいぐるみをかぶったまま頷く。 「…だとしたら早く水戸に行くべきだが…水戸には長州の奴等も居る。 無闇に動けば…わしら土佐の面々も面が割れる恐れがあるぜよ…」 難しい顔をして陸奥は腕を組む。 「…どうした物か…」 朝尊も不安そうに俯いた。 「…水戸も心配は心配やけど…光國様には悪いねんけど…簡単にやられる様な人じゃ無いと思てんねん。 …せやけど、問題は土方はんらと、愛奈達ですわ」 目を細め山崎は坂本に話を切り出す。 「…古巣の連中が心配か?」 挑発するように武市は問い掛ける。 「…当然やろ。俺は医者も兼任していたんな。 皆が万全じゃないのは百も承知…ましてや源氏はん等も負傷しているのに山賊とやり合うなんざ…自殺行為や」 武市を見詰め山崎は言い返した。
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