第七十話水戸語りと新撰組の鴉

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「で?お前はどうするつもりだ? よもや…光國様の御命令無視して…助けに行く…とほざく気では無かろうな?」 朝尊は山崎を睨み付け問い掛ける。 …武市っ!? …朝尊っ!? 二人が山崎を煽るので、坂本と陸奥は青ざめる。 「…そうやな…得体のしれへんあんたら土佐と、水戸の光國様…どちらも俺にとっては価値なんて無い命や。 気心知れた仲間が危ない橋を渡るなら…俺も渡るまで…光國様だろうと邪魔するなら殺すまでやで」 冷酷に笑って山崎は言い放つ。 「丞っ!?お前何言って…!?」 流石に厚は山崎を嗜めるが… 「俺は本気や。打刀二振りと、浪人二人なら余裕で殺せる。 三つ葉様は短刀やし、光國様は子供の姿が多い。 首を跳ねれば誰でも動けなくなるは道理…」 真顔で山崎は厚に答えた。 「貴様っ!」 「っ!?」 朝尊と陸奥は、慌て打刀を鞘から引き抜く。 カタンッ シュンッ だが、それよりも早く…天井裏から青年が現れ… 「っ!?」 キーンッ クナイで山崎に斬り掛かり、山崎は短刀の厚を具現化させ…何とか鞘から引き抜き防ぐ。 「あんたは…光國様の忍…弥七はん…」 壁際まで追い込まれ、山崎は冷や汗を掻く。 「光國様に仇なす者は消す…」 無表情で弥七は山崎に言い放つ。 「たっ大変だきゃっ!!」 「本当に仲間割れになってしまいますっ!!」 手足をバタバタさせ、陸奥と朝尊は慌てるが… 「「」」 涼しい顔をして坂本と武市は慌てない。 …あれ?…何で冷静なんだ?陸奥が取り乱すのは分かるけど…なんか朝尊さんはわざとらしい… 気付いた厚は目を見開く。 「…ふん…」 ドカッ 「いっ!」 手元を蹴られ、山崎は呻くと短刀を落としてしまう。 「幕末と江戸初期じゃ…修羅場が違う。俺はずっと光國様達の旅路を護衛して来た。 …潜り抜けた場数も違うんだよ…死ね」 笑って弥七は、クナイを山崎の首筋に突き付け力を入れる。 …あかんわ…弥七はんに殺されてしまうなんて…
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