第七十話水戸語りと新撰組の鴉

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死を覚悟した山崎は目を瞑り… 『山崎…次の任をお前に任せる』 真面目な副長… 『丞君は真面目ですね…土方さん見たいな堅物何処が良いんです? 斬っちゃえば良いのに…あんな頭でっかち…』 天の邪鬼で修羅の沖田… 『丞っ!!巡察行こうぜ!』 素性調べて分かった何処ぞの藩の御落陰だった元若君のへ藤堂… 『…うむ…』 無表情で無口な斎藤 走馬灯の様に山崎の脳裏に浮かぶ。 「…いつまで目を瞑る気だ?」 「へっ!?」 弥七の声で山崎はびっくりして目を開けた。 「光國様の御命令を伝えに来ただけだ。 この文を笠間で営む陶芸家に届けろ。 …それとついでに山賊と闘っている土方達に助太刀せよ…と申して居られた」 呆れた顔をして、弥七は懐から文を出して山崎に渡し伝える。 「俺を殺すんじゃあらへんかったんですか?」 腰が抜けた山崎は弥七に問い掛ける。 「忍として半人前の貴様を殺して何になる? 到底貴様は俺の足元にさえ及ばない。 殺すなら…俺が姿を見せていた時点で殺していた。 …無駄な動きなど見せぬさ」 山崎を見下ろし、弥七は真顔で答えた。 「ぐっ…」 図星を言われ、山崎は下に俯く。 …丞…弥七さんも手加減なしの正論だぜ… 溜め息をついて厚は苦笑いする。 「何をグズグズしている?厚、山崎…お前らの足なら一刻も掛からん筈だ。 守りたければ助太刀に行け」 呆れた顔をして弥七は二人に言う。 「…承知しました!!」 「合点!承知!」 山崎と厚は、一瞬で姿を消した。 「流石は『風車の弥七親分』だな!!」 笑って坂本は感心して頷く。 「…見事な演技…光國様も御優秀な忍を御手元に置かれている…」 武市も笑みを浮かべ頷く。
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