第七十一話妾が策を練る…全員従うように…

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「信長様を離せ!!」 不動は苛立ちながら叫ぶ。 「落ち着け不動…」 薬研は余裕そうに不動を宥める。 …思い出しました…金ヶ崎で信長を見逃した浅井の軍師ですね… 宗三は気付いて目を見開く。 …何故我々に手を貸す? 信長を奪還すれば、動かない信長を背に庇い長谷部も目を細めた。 ……殺し掛けた軍師だ… 目を見開いて信長は無月を見詰める。 金ヶ崎から逃げる時…馬が得意な信長は単騎で京までの道を駆けていた。 …余裕…余裕…俺の腕ならば馬さえ居れば逃げ切れる… 笑みを浮かべていた信長だったが… バンッ 「っ!?」 何処かに潜んでいたのか、火縄銃で狙撃され信長は右腕を射たれ馬から落ちた。 「伏兵を潜ませて居ないとでも思ったか? 桶狭間や美濃で名を馳せた信長も、まだまだ青臭いひよっこだ」 ガサガサッ 伏兵と共に、初老の男が藪の中から出て来た。 「…爺ごときが…舐めた口を…」 怒りを露にしながら、信長は男を睨み付ける。 「貴様の首を射つなど容易い。…だが、それではつまらん…。 信長よ、爺を倒したくば京に戻り体勢を立て直せ」 笑って男は言うと背を向けた。 …っ!? 男の表情は恐ろしく、冷酷で冷たく信長が尻込みするのに充分だった。 …くそ… そこで信長は気を失い、目を醒ますと京の屋敷に居たのだ。 「…海北綱親…」 思い出した信長は、長谷部の背に隠れながら震える声で名を呟く。 「策を披露するだって?ふざけた事を言うな!! 俺は軍師だ…!!お前の助けなんていらないっ!!」 無月に向かって竹中は怒りを露にして叫ぶ。 「今のお前なら自分の状態も万全じゃないと分かっている筈…。 通信機持って居るんだろう?貸せ…。 豊臣の力も借りなければ戦闘が長引く」 手を差し出し、無月は竹中に要求する。
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