第七十四話虎吠える歌舞伎者の大一番

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「…裏口と正面から…ですか。あまり死人は使いたく無いのです。 …君、急いで武器庫へ行き武器を出してください。 最新武器なら…強者でさえ形無しですからね」 少し考えた後、神子田は武器庫の鍵を渡して男に命令する。 「承知致しましたっ!神子田軍師はどちらに?」 困惑して男は神子田に問い掛ける。 「私は頭領の元に行って指揮を取ります」 そう答え、神子田は足早に去って行く。 「分かりました!」 男は神子田の後ろ姿を見送り頭を下げるが… 「鍵getや。…半年前から潜入して腹心になるの苦労したわ…。 …やっと肩の荷が降ろせる…」 溜め息を着くと、男は笑って呟く。 紫色の髪でポニテにし、眼鏡を掛けたみすぼらしい着物を着た青年は指に鍵を引っ掛けクルクル振り回す。 小西行長。 秀吉の子飼いの将で清正や石田の幼なじみ。 関ヶ原では西軍に着き、石田と共に処刑された。 「福に黙って来て正解やったし…偉く騒がれて大変やったかもな。 福は声がでかいし、三成と清正居らんと止められんわ」 溜め息を着くと、行長は武器庫に向かって走って行く。 「…ん?何故さっきの男は…私を軍師と呼んだのでしょう? …他の奴等は『先生』と呼ぶのに」 疑問を感じた神子田は足を止めた。 …待てよ…さっきの男…秀吉の子飼いに居た武将だ…!! 気付いて神子田は、慌て武器庫に走り出すが… 「っ!?」 武器庫の門は氷付けにされており、中に入る事が出来ず神子田は驚愕した。 「念には念をってね!」 武器庫の内側で、少年は笑ってブイサインする。 朱色の髪で短髪、緑色の陣羽織に青緑色の甲冑姿の青年は胡座を掻いていた。 芦葉江。 行長の脇差しの刀剣で、商売と知略に長けている。 「でかしたで。芦ちゃん!」 荷車に武器を入れながら、行長は笑って芦葉を褒めた。 「軍師足るもの…一手、二手先を読まないとね!」 立ち上がると、芦葉も行長を手伝い荷車に武器を入れていく。
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