第七十四話虎吠える歌舞伎者の大一番

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「「…」」 その様子を見ていた二人は、木の上から変な顔をする。 「…三郎様、あれ…あの狐は…もしや分家と婚姻した鎌倉幕府の初代将軍では?」 山吹色の髪で短髪、榛色の着物に水色の袴を着た青年が隣にいる青年に問い掛ける。 北条綾光。 三郎の太刀の刀剣で、長船派。 旅の道中は料理番短刀。 「……間違い無いだろうな。あんな源氏の名に着飾った極潰しの体たらく…。 …だから源氏の血は三代と早々に絶えたのだ」 呆れた顔をして青年は頬杖を着いた。 灰色の長い髪をポニテにし、旅装姿の青年は溜め息を着く。 北条三郎。又の名は上杉景虎。 上杉謙信が関東出兵した際に、父である北条氏康は和睦の印として三郎を養子に出した。 謙信亡き後、家督争いの際に御館の乱を起こし…敗北し逃げる際に妻の華姫と共に捕らえられ処刑されたのだ。 歪んだ時代の今、重門に誘われ幕末時代の諸国を巡る道中の最中… 幸か不幸か出会したのである。 「重門からは影から助けろと言われている。 どうするべきか…」 目を細め三郎は考え込む。 「あっ!良い考えが御座いますっ!私は風を操る究極の刀剣です故…ゴニョゴニョ」 思い付いた綾光は三郎に耳打ちし… 「…それなら姿を見せる事も無いな」 納得して三郎は頷く。 『背に腹は変えられませぬっ!』 『弟の刀剣と口付けするくらいなら切腹がマシだ!』 弁慶は頼朝の襟首を口にくわえ、引っ張ろうとするが… 木に爪を立て、頼朝も必死に抵抗していた。 ヒュワッ 『『!?』』 不意に風が吹き抜け、弁慶と頼朝は宙に浮く。 びっくりして目を丸くする二匹だったが… ヒュルルルッ そのまま頼朝は膝丸の頭上に… 弁慶は岩徹の頭上に運ばれ… フッ 一瞬で風は消えて無くなり… ブチュッ 「ッ!」 『?』 落下した拍子に膝丸の唇と頼朝の唇が重なった。 膝丸は蒼白になり、頼朝は白眼を剥く。
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