第七十四話虎吠える歌舞伎者の大一番

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一方… 「何か臭い…」 臭いに気付いて頼朝は立ち上がる。 ネトッ 「っ!!何だこれは…」 膝丸は、頬に謎の液が着いて固まる。 「ネバネバか?…妙だな…」 興味深そうに岩徹は首を傾け… 「まるでそれは…唾液見たいだな…」 気になって弁慶も頷いた。 「唾液…?」 弁慶の言葉に頼朝が上を振り向くと… 【グヘヘヘ…】 巨大な人間の頭に、蜘蛛の様な人間の手足が無数に着いた山賊が笑いながら顋を開いた。 「三郎様!」 「いや、待て…」 慌て綾光は叫ぶが、三郎は綾光を制止する。 タンッ 三郎には、地を駆ける二人の姿が見えていた。 身軽な動きで、緑色の髪を靡かせながら… 頼光と歌仙、高次の隣を通りすぎて… 「笑いなよ…にっかりとね」 ザンッ 笑みを浮かべ…素早く鞘から引き抜いた脇差しを上から下へ山賊に振り降ろした。 ザアアッ 血渋きと共に、山賊は断末魔の悲鳴を上げる事無く砂に還る。 「青江…!?」 びっくりして高次は声を掛けた。 「やあ、高次。脇差しを忘れちゃ駄目だよ。…太刀とは別に、脇差しは使い勝手が良いんだからね。 うん、これは本当の事だよ?主にまた死なれちゃ悲しくなるのは僕だからね」 寂しそうに笑って青江は高次に振り返った。 「ひょわわわっ!?」 巨大な山賊の口が、頼朝に迫り頼朝は情けない悲鳴を上げる。 「…品が無い叫び声…別に僕は源氏の名なんて固執してないつもりだけど…」 ドスッ 【ギッ!?】 頼朝の叫びに、苦笑して青年が跳躍しながら溜め息を着くと… 山賊の頭に太刀を突き刺して着地する。 「流石にどうかと思うよ? 仮にも将軍にまでなったんだし…不様な体たらくを晒してちゃ…優秀な義経と余計に差が開くと思うな…」 ガギギギギギギッ 笑いながら青年は言うと、太刀を丸で円を描くように一周させ… 「おいしょ…」 飛び降りるついでに、青年は後頭部を太刀で一刀両断しながら山賊の背中に乗る。
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