第七十九話我が命じる!者共殲滅せよ!

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『そうですが…子飼いの子供は俺だけではありません』 女性に聞かれ、石田はキッパリと答えた。 『素直で宜しい。そなた、名は?何と申すのじゃ?』 笑って女性は石田に名を尋ねた。 『石田佐吉と申します』 怪訝そうな表情をしながら、石田は名乗った。 『ならば佐吉、妾と一つ約束せよ。 この乱世、忠義や野望で命を散らせる馬鹿共が多くて敵わぬ。 賢そうだからな、理解できよう。だが、決して忠義を優先せず、生きる事を第一に考えよ。 堪え忍ぶ事もまた、生き残る手段と捉えるのじゃ』 女性は石田を真っ直ぐ見据え言った。 『…覚えられたら覚えて置きましょう』 怪しそうに女性を見詰めながら、石田は 挑発するように答えた。 『可愛いげ無い子だな。子供は子供らしく振る舞えば良いものを』 『可愛いげ無くて結構です』 女性が言うと、石田は言い返した。 『市様、此方に居られましたか?』 そこへ、秀吉がやって来た。 『猿か。会議はどうであったか?』 目を細め、女性は秀吉に聞く。 ……この人が市様… そこで初めて、石田は市だと分かった。 『思わしくありませぬ』 困惑しながら秀吉は答える。 『お前も…変わったな。織田を傘に天下を欲するようになるとは…』 笑って市は言うと佐吉に振り返り 『また会おうぞ、佐吉』 そう言って市は踵を翻して去って行った。 でも、それは生きて叶わず… 『離せ!秀吉!官兵衛さんっ!中にまだ市が!市が!市が居るんだよ!!』 秀吉と官兵衛に止められ、冷静な竹中は取り乱しており… 『市様は嘘つきな人だ。生きて会えなかったではないですか』 燃える城を見詰め、石田は寂しそうに答えた。 「市様…?」 全てを思い出した石田は面食らった顔になる。
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