第八十二話恐ろ細川と圧し斬る囮部隊

4/5
前へ
/857ページ
次へ
「えぇ…好きですよ?…無礼者を斬って踏みにじる感覚が堪らなく好きです。 …私も長くに渡り…天下人の手から手に渡って来た。 …実践で使われなくなった私の悔しさ…敵と戦う度に…不思議と薄れて行くんですよ?」 ニヤリと笑みを浮かべ、宗三は長谷部に肯定した。 「っ…憂さ晴らしか?…顔に似合わず危ない奴め…。 ……俺は貴様と違って斬る事だけに専念している。 如何に主に相応しい刀に成れるか…をな」 鼻で笑って長谷部は宗三に答えた。 「…また御得意の主第一主義ですか?…私は貴方程危なくないと自負しているつもりですよ。 貴方ならもっと危ない方向に傾くかと思いますがね?」 笑って宗三は長谷部に挑発する。 「…ふっ…俺が危ない方向に傾く…だと?良くそんな世迷い言を言えるな? …俺は常に主を思い、主の為に刀を振るう…そう俺は主の懐刃なのだ!」 鼻息荒くし、長谷部は真顔で断言した。 「…」 …危ない…本当に長谷部は危ない… 宗三は白い目で長谷部を蔑みながら理解する。 「…長政様、無月様…」 「あの二人斬ります?」 一文字と信義は、二人に問い掛ける。 「斬るのは良くない…仮にも仲間だぞ?」 慌て浅井は二人を止める。 「泣かぬなら泣かせてみようホトトギス」 ポツリと無月は口にする。 「…え?」 訳が分からない浅井は目が点になる。 「長谷部と宗三程の九十九神なら…死人にとってこの上無い御馳走…」 笑いながら無月は指を差す。 「…で…あればこそ…勝手に二人が餌になってくれたので…私達は苦労なく動ける訳ですよ」 宗三と長谷部の周囲に、沢山の死人達が押し寄せていた。 「「っ!?」」 気付いた長谷部と宗三は、顔面蒼白になる。 「逃げないと…喰われますよ?行きましょう、長政様…一文字、信義」 笑って無月は二人に忠告すると、三人に促して逃げ出す。
/857ページ

最初のコメントを投稿しよう!

60人が本棚に入れています
本棚に追加