第八十五話失っていた記憶は呪いの様に…

3/3
前へ
/857ページ
次へ
「無月…教えてくれ…市に…愛奈に…これからどう接すれば良いのだ?」 震える声で浅井は無月に聞く。 「長政様…」 掛けて上げる言葉が見付からず、無月も泣きそうな表情になる。 『長政様…市に二心などありませぬ!』 思い出した記憶は残酷な記憶ばかりで… 真っ直ぐ見据え、言い切った市を… 『黙れ!この面汚しがっ!』 我を失った某は… ドカッ 『ぎゃっ!』 市の頭を蹴り… 倒れた市の背中や腕を… 『許さん!絶対に許さんぞ!』 ガンッドカッドカッ 市が口から血を流し、動かなくなるまで某は蹴り続けた。 それからも、市を牢に軟禁し… 毎日毎日毎日…市に一方的な折檻を続けた。 骨が折れる鈍い音。 美しかった市の顔が変形して行く様子… 手や足に残る肉を叩く感触… 「某は…市に会う資格など無い…某は…某は…!うわぁぁぁぁっ!」 発狂するように浅井は叫ぶ。 「…無価値…貴様に市を託すべきではなかった」 物陰で様子を見ていた信長は、冷たく吐き捨てると去って行った。 『貴様など…所詮…織田の名を語る女でしかないっ! 馬鹿な女だ…某に愛されてると思い込んでいたとはな!』 「っ!?」 鶴丸に抱っこされ、薬研達と話をしていた愛奈は過去の記憶… 浅井に言われた事を思い出して目を見開き、身体をビクッと震わせる。 「…愛奈…?」 鶴丸は愛奈の様子に気付いて、心配そうに声を掛けた。 「大将…?」 薬研も心配して声を掛ける。 「ううん…大丈夫…大丈夫だから…」 苦笑して愛奈は笑顔を作り安心させるように言う。 光忠、鶴丸、一期一振、大倶利伽羅には誤魔化す事が出来なかった。 四人は顔を見合わせると…心配して愛奈の様子を見守る事にした。
/857ページ

最初のコメントを投稿しよう!

60人が本棚に入れています
本棚に追加