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…頑張らなくて良いんだよ…馬鹿愛奈…
抱き締めたい気持ちを押さえ、竹中は苦笑する。
「私は…浅井長政様…貴方に前世の市として離縁を希望します!」
指差して愛奈は浅井に言い放つ。
「離縁…」
痛みにこらえ、浅井は起き上がる。
「…貴方が正気じゃなくても…与えたトラウマは消えません。
よって夫として貴方を愛せません。市として決断するならば…離縁が妥当だと…」
怖くて愛奈は涙目になりながら浅井に言う。
「愛奈が望むなら離縁しよう。某に意志など無い。愛奈に従うのみだ」
悲し気な表情で浅井は愛奈に頷く。
「ですが…もし…私に対して心があるなら…同盟目的では無く、一人の武士として出直して私を振り向かせて見なさい」
背を向けると、愛奈は浅井に向かって言い捨て…小走りで次郎に駆け寄る。
「…」
愛奈の言葉に浅井は目が点になりポカーンと固まった。
「怖いのを我慢して離縁を告げるとは…」
肉体、人格を失っても…気が強い真っ直ぐな姫…
「大胆不敵というか…行動的と言いますか…」
…音色に合わせ…強気に堂々と踊る白拍子は変わらなくて
「男の俺達も顔が上がらないや」
とんでもない姫様は傷を受けても…ぜんぜん自重なんかしない困った姫のまま…
『半兵衛、市を手放した事…貴方後悔するわよ?
私が唯一認めた義理の妹だもの…当然でしょ?』
頭を抱え、竹中は涙を流しながら笑うしかない。
いつか…蝮の姫様に言われた言葉を俺は思い出す。
眩しい姫様は眩しいまま…気高く諦めを知らないから…
だから俺も欲しくなる。
求めたくなるんだ。
弱点は攻撃されたくないけど…だから俺も諦めないからな?
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