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第八十八話親の心、子知らず…槍と打刀
光忠と大倶利伽羅は、動きにくい甲冑を外し…
上着も脱いで川辺の中に入っていた。
「僕は馬鹿だ…お方様と明実が精神的病気だったの知っていたのに…何も考えてなかった」
水面を見詰めながら、光忠は呟く。
「…俺もお前と変わらない。愛奈の気持ちに気付いてやれなかった」
悲し気な表情で大倶利伽羅も光忠を見詰める。
「伽羅ちゃん…」
大倶利伽羅の言葉を聞いて、光忠も泣きそうになる。
同じ頃…
「愛奈を守るため…俺達は死ぬ気で…究極の力を手に入れた…それなのに…」
今でも忘れない…自分を見て怖がる娘の様子…
森の中を歩きながら、鶴丸は泣きそうな顔をする。
「鶴丸殿…」
鶴丸の気持ちを察し、一期一振も悲痛な表情になる。
「怖がらせる事しか出来ないなんて…」
ドンッ
悔しくて、鶴丸は拳を木に打ち付けた。
ピキピキッ
その木を中心に辺りが氷付けになる。
「あんまりだろ?」
涙を流して鶴丸は言う。
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