第八十八話親の心、子知らず…槍と打刀

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「次郎姐さん…」 「ん?」 次郎に抱っこされながら戻る途中、愛奈は次郎の名前を呼ぶ。 「直ぐには治らないけど…光忠お兄さん達を傷付けちゃったから…私…謝る」 涙目で愛奈は次郎に打ち明けた。 「愛奈が謝ってくれたら…あいつらも喜ぶさ。 無理しない程度に頑張りな?」 優しく微笑んで次郎は愛奈の頭を撫で… 薬研と不動も優しく微笑んだ。 同じ頃… 長谷部は山賊拠点を一人で調査していた。 「敵が殲滅した今…信長や主に危険など無いと思うが…念には念を入れないとな」 ……俺が黒田様に下げ渡されて直ぐ… 信長は志し半で本能寺と共に焼けた。 …もう二度とあんな想いはしたくない… 硬く拳を握り、長谷部は拠点から出ようとした… 「…日本号…?」 そこに、腕を組んで立つ見覚えのある男に長谷部は目を丸くする。 「よぉ?…その…なんだ…顔を会わせるなり戦になったし…愛奈も精神的におかしくなるしで…俺も敵が居ないか調査していたんだ」 苦笑して日本号は頭を掻きながら、長谷部に言う。 「…貴様が調査を?…ふん、酒の飲み過ぎておかしくなったんじゃないか?」 鼻で長谷部は笑うと…日本号に背を向けた。 「…おかしくなったかもな…」 グイッ 「っ!?」 笑って日本号は長谷部の肩を掴む。 掴まれた長谷部は、びっくりして日本号に振り向き… 「ん…」 日本号に口付けされ、長谷部は大きく目を見開いた。 くちゅっ…ちゅぷ… ビクビク 「ん…ふあ…んう…」 音を立てながら、日本号は長谷部の舌と絡ませ口内を犯す。 ズルッ 銀の糸を引きながら、やっと長谷部は解放され… 「っ…」 力無く長谷部は座り込んだ。 「あんたが俺を酔わせた。だから酔わせた責任をあんたが取ってくれ」 笑って日本号は言うと、長谷部を残して拠点から出ていく。 「っ?屈辱だ…くそっ…誰が貴様の責任なんか取るか…」 顔を真っ赤にさせ、長谷部は日本号の背中を睨み付けるのだった。 「…好都合でしたのに…長谷部を手込めにしなかったのですね」 一連の様子を見ていた宗三は、出てきた日本号に言う。 「手込めにするなんざ簡単だけど…想いが通じ合わないとつまらねぇさ」 苦笑して日本号は肩を竦める。
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