第九十話毒キノコと愉しそうな島さん

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「じゃあ…行きましょうか…」 山の頂上から、愛奈達の様子を見た後…重門達は去っていく。 「…あれ?そう言えば…信長は?」 気付いた宗三は二人に尋ねる。 「さっきから見てねぇな」 「俺も…」 薬研と不動は首を傾けた。 愛奈達から少し離れた所で… 信長は立ち止まり背後に視線を向ける。 そこには、亀甲が膝をついて頭を下げていた。 「…お久しぶりでございます…信長様…」 目を伏せたまま、亀甲は信長に挨拶する。 「姿形は違うが…貴様…十兵衛か…」 気付いた信長は亀甲に振り返った。 「刀と同化し、気付けば…この様な姿に…」 頭を垂れたまま亀甲は信長に答える。 「我を本能寺で討ったのは貴様だ。今さら何用で我が前に姿を現した?」 不愉快そうに信長は亀甲に問い掛けた。 「生前の私は…貴方に想いを抱きながらも…貴方を理解する事が出来ず…謀反と言う大きな過ちを犯しました。 …ですが、今の私は違う。貴方を理解しているからこそ愛している。 …この明智光秀…貴方の駒として一生使える所存です」 頭を下げ、亀甲は信長に忠誠を誓う。 …こやつ…愛奈を守る為に利用出来る…か? ならば利用するまでぞ… 内心笑って信長は納得すると… 「折れる時まで、我に生涯使えよ。違えた時は…いつでも砕くと思え!」 信長は亀甲を見下ろして命じる。 「はっ!承知致しました!」 嬉しそうに亀甲は信長に答えた。 同じ頃… 「…これなら怖くないだろ?」 「?」 愛奈の目の前に、女装した竹中が姿を現す。 色鮮やかな蝶柄の黄色い振り袖、花飾りを付けた姿は街娘にしか見えない。 「…半兵衛…あんなに女装嫌だったのに…私の為に女装したの?」 笑って愛奈は半兵衛に聞く。 「そうだよ…悪い?」 顔を真っ赤にして竹中は愛奈に聞き返す。 「ううん、悪くないよ。ありがと」 嬉しそうに愛奈は微笑んだ。
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