第九十三話俺はね…あんたみたいな人に虫酸が走るんですよ

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『兼続、信之、幸村…こうまで行っても来る気がないなら無駄だ』 窓から私が見てると、綺麗な人が三人に言った。 『むっ?しかし…近い内に長久手が迫って居る…戦力を増強するにしても…島殿に力を借りなくては…』 兼続と呼ばれた男は綺麗な人に言うが… 『仕える気がないなら…何度言っても無駄だと言っているのだ。…下らぬ時間に裂いている余裕はない』 …言ってくれますねぇ…ガキが… 私は…その御仁の言葉に怒りを覚えた。 『三成の言う通りだ。幸村、兼続、帰るぞ』 御仁の言葉を察し、信之は二人に言った。 『っ…致し方あるまい…』 『はいっ、兄上!』 渋々兼続と幸村も、信之に従い四人は私の庵から去って行く。 スパンッ 『ふむ…さて…島左近…久々に頭に来ましたよ…三方原以来ですかね?』 不敵に笑みを浮かべ、俺は旅支度をし長久手へ見に行きました。 二つの砦、城を挟んでの戦は…膠着状態で動きが無い。 『…徳川の忍…なんか妙な動きをしているね…』 観察していた俺は、徳川の動きに気付いて目を潜めた。 まぁ、武田に居た時から狸は嫌いでね。 狸に裏がある…って頭で理解していたのかも… 案の定、忍が前線に居た若手武将らの陣に奇襲を仕掛け… 戦場の経験が少ない若手武将は大混乱。 本多忠勝率いる四天王の攻撃で次々と討ち取られる中… 『なんだい?あいつは…味方見捨て退却?』 一人の中年男が、前線の味方を見捨て自分は部隊を引き連れ離脱していた。 後で知りました。そいつが神子田正治ってね。 『負傷した者は直ぐに後退しろ!敵を撃退しつつ前進する! 歩ける者は負傷者に手を貸せ!仲間を見捨てる事は…この俺が赦さん!』 絶望の中…御仁だけが前線に残り部隊を叱咤激励していた。 ……まだ若いのに……なんて人だ… 目を奪われた。本当に…戦場に咲く華とは御仁の事を言うんだと分かった。
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