第九十六話複雑な気持ち

2/6
前へ
/857ページ
次へ
「あれ?古備前は?」 気付いた平助は首を傾ける。 「姿見ないね」 沖田も周りを見回す。 「…道に迷ってんのとちゃいます?」 山崎は呆れた顔をする。 「日本号はんは…ほんに…お人が悪くて敵いませんわ。…自分置いて先に戻るなんて…」 不満タラタラ、明石は日本号に言う。 日本号は微笑んだまま気絶して動かない。 「探しに行く?」 「でも…僕達も迷わない?」 「かーっ、じいちゃんだから仕方無いけどさ…」 兼重が聞くと、安定は首を傾け…加州は腕を組む。 「副長、和泉守さん…俺達にお任せください」 「直ちに探しに行きます」 斎藤と国重は二人に許可を貰おうとし… 「今からか?でも…」 「…」 兼定はびっくりし、土方は考え込む。 「あっ、いたいた…」 盛親が皆を見つけ駆け寄る。 親忠と信親も後から皆の元へ歩いてきた。 「宿屋さ…ここ猟師村だから無いみたいで…」 土方に伝えようとして、言葉を詰まらせ盛親は信親に視線を移し… 「大人数で泊まれる場所が…廃業した宿屋しか無い見たいです」 信親も苦笑すると親忠に視線を向け… 「ただ曰く付き?みたいで…宿屋の主人とその妾の男が…盗賊に襲われて死んでいる見たいで…出るらしいんです」 青ざめた顔をして親忠も答えた。 「は?」 訳が分からない土方は目を真ん丸にする。 「済まん、遅れた」 そこへ鴬丸と大兼平が戻って来た。 「…なんでてめぇも…女になって居やがる?」 眉間に痙攣を起こし、片手で頭を抱えながら土方は問い掛ける。 「面白そうだと思ったからだ」 あっさり鴬丸は答えた。 大兼平はずっと放心状態になってたのは言うまでも無い。
/857ページ

最初のコメントを投稿しよう!

60人が本棚に入れています
本棚に追加