action.2 scene.2

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 …で。さて…。  なにしろ『ムー』を買い揃えてて、超常現象(オカルト)に詳しいのは後輩の空井多夜子。  …と、待った。あのコいま灰色のガンダルフ…じゃない、  受験生。だったっけ。(1984年当時)。  じゃあ、ほかに、こういうのに理解があって、信用のおけるやつは…。 「 ! ッっとォ、鬼太郎。タイスタイミン!」  叫んじゃった。  学校がえりの横浜駅の、西口地下街某書店。五日と二十日と二十四日に、行けば必ず誰かしらと遇えるという、雑誌コーナーの並び。 「おや真沙香(まさか)女史。おひさしぶりですねー。」  おもいっきり背中をどやされたそいつは平然と振り返った。 「 ”槇子” だってば。名前変えたん、知ってるでしょ。…今晩おひまっ?」 「ホテルですか?」  もちろん冗談である。  けど、立ち読みのお隣が、ちらっと『BCS』(ビッグ・コミック・スピリッツ)(まだ ”軽シン” 連載中だった)から目をあげるもので、慌ててその場から立ち去ったりなんかして…。 「えっとね、聞いてもらいたいことがあるんだけどォ」 「あ、いいですねえ。つきあいます。」 「これこれ槇子ちゃん、あたしはっ?」  脇から千香がくちをはさむ。 「…あ、そうだっけ。」  今日は漫画のアシストやりに、泊まりに行く約束。  でないと完全に落としてしまうのだ。あたしが主宰をしている、同人誌の〆切。 「…んじゃ、腕力のあるところで、肉体労働(消しゴムかけ)まで付き合って頂く。ということでぇ。」 「おっと。何なんですかそれはっ」  慌てるのは強引に黙らせて。  ちなみに夜間部の学生のくせして今晩おひまなお兄さんは井尾鬼太郎(いお・きたろう)という。  丁寧語をつかうくせがあるから書いちゃうと紛らわしいけれど後輩ではなくて、あたしと高校で同学年で、生徒会長をやってた名物男だ。  その、お父さまがね。  ほとんど『紅 三四郎』か合気道の開祖・植芝盛平翁かという…既存の武道に飽き足らず、ついに自分なりの流派を打ち立ててしまったってぇ大物で。  × 文筆家のほうがいい。  関係あるのか知らんが水木しげるのファンでもあるのだそうだ。  安易なネーミングの結果、ついでにいえば二人いる妹ぎみは猫子&ねず美ちゃんだった…。
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