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…そして。もうひとり…。
「…あ~ぁあ。バッカねぇ…」
彼女は深いスリットからこぼれる眩いばかりの脚線美を、無造作に組みかえながら軽くためいきをついた。
中華街界隈でも群をぬいた超・高級料理店といわれる、その2階の個室である。
ここからだと、まだ逃げて行くふたりの後ろ姿が見える。
「…しかたないわぁ。おしごと(任務)しようかしらぁン」
すたすたと、エルメスのクラッチを片手にみせを出て行こうとするのへ、キャッシャーの青年が追いすがった。
「…あの、お客さま? お勘定を…」
「 あはン? なにかおっしゃって?」
シームストッキングの脚を、世にも悩ましく上げ、豪奢な金髪をかきあげて、華やかに青い片瞳をつぶる。
店員がおもわず生唾を呑みこんだ隙に、テスはさっさと逃亡をくわだてていた。
安月給の時空パトロールが、なんで最高級料理店に入れるかというと、よーするに最初から、払うつもりなど毛頭なかったのである…。
「あたくしみたいな絶世の美女に、大衆食堂が似合うと思って?」
…と、いうのが、彼女の言いぶんであった…。
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