一、理玖と太

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一、理玖と太

由井理玖十六歳 あと、ちょっと・・・ あとたった二年、たった二年我慢すれば、それで高校生活も終わる。 やっとだ!やっと、解放される。大嫌いな野間太から。 よくここまで耐えた、自分は偉い。 そして野間太もまた、全く同じことを考えていた。 あと三年、あと二年、・・・高校に上がって毎日、毎日、念仏のように唱えていた。 太と理玖は合えば喧嘩、すれ違えば喧嘩、名前を聞くだけでも喧嘩が始まる。 まるで前世の前世の前世よりも、もっと前から敵同士だったかのようにいがみ合い、ぶつかり合い、傷つけあう。 もう、そうなると誰も手がつけられないほど暴れ倒す。 二人に、相手のどこが、どう嫌いかと聞くと 理玖は、太が自分より少し運動神経がよくて、運動会や球技大会では絶対、太にかなわないところと、いつもヘラヘラして、こずるくて人誑しで要領が良くて、太のせいで自分が悪くもないことの犯人に仕立てあげられること数回。 それも太が嫌いな理由のひとつ。 太が理玖を嫌いなところは、自分よりかなり賢くて常に見下したようなものの言い方をするところと、正論でまくし立てて、喧嘩の強さは互角でも口では完全に負けなところ。 まあ、それは太が勉強ができないという僻みの部分も大いにあると思う。 先日も授業中に太が当てられて、答えられなかったことを鼻で笑われたと勘違いして大ゲンカになった。 このケースの勘違いでの大ゲンカは、実は、小学校のときからで二人の喧嘩の原因のナンバー3にははいるだろう。 喧嘩の原因なんて、言い出したらきりがないほどあって、結局何が一番の原因なのかと聞くと、 「気にくわない」という事になる。 しかも、長年の喧嘩ばかりしているせいで、喧嘩慣れして、二人は、とにかくとても強い。 喧嘩が始まると、誰にも手が付けられないほど強烈な喧嘩が始まり、先生たちも気を使ってなるべく教室の離れたクラス配置にしてきたのに、中学校二年で、あろうことか一緒のクラスになってしまった。 クラスメートたちも、この一年間はもうだめだ・・・終わった・・・と思ったことだろう。
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