一、理玖と太

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そういえば、よく考えたら一人だけ二人を止められる人間がいた。 その唯一の人間は、じっくり思い出さないと忘れてしまうほど、内気で地味でおとなしくて、なんの取り柄も特徴もない大西ヒロト。 いつも、喧嘩の仲裁に呼ばれる。 ヒロトがどこに居ようと、喧嘩が始まると皆が探し回り、呼びに来る。 けれど、ヒロトは二人とは大きく違うタイプで、友達も特には作らない。 話し方も笑い方も学校に来ると忘れてしまっているような、なるべく人と接しないように、誰の邪魔にもならないように地味に、穏やかに窓際でぼんやりしているような人だったから、どこにいるのか、いたのかいなかったのか、ヒロトを探してまた大騒ぎになったりもする。 三人は、ご近所さんで幼なじみ。 ともに一人っ子で、やっと歩く頃から常に行動を共にしてきた。 背格好も似ていて長身で細身。 喧嘩をしていないときの三人はそれぞれ賢くて、スポーツマンでやさしくて、かっこよくてモテルのに、全く、惜しい話だ。 後ろ姿は三人ともほぼ同じで間違うこともしばしば。 ヒロトを理玖に、あるいわ太に間違うことはともかくも、理玖を太に、太を理玖に間違ったときは、それは想像するのもおぞましいほどの大惨事になる。     
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