二、死んだのか???

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いつもなら食ってかかる太が頬を赤くし、俯いてニヤニヤと笑った。 「あそこ・・・」 それは隣の商業高校。 クレタは相変わらず振り返ることなく門を抜け、空いている入り口を探し、さっさと教室に向かった。そして手招きされた教室を理玖がいち早く覗き込んだ。 「うわ、女子ばっかりだな。何しにここへ来たんだ。」 「うん・・・好きな子がいるんだ。」 太は下を向いて真っ赤になりながら答えた。 「え?太って・・・ヒロトが好きなんだと思った。」 「理玖テメエ。」 「僕も・・・太がその気ならいいかって思っていたのに・・・なんかショック・・・」 「なんだよ、ヒロトまで。まあ、ヒロトも好きだけど、そういうのじゃなくて・・・」 「どの子だよ。」 理玖は肘で太をつつき、太が窓に手をかけて教室をぐるりと一回見渡しただけで指をさし、 「あの窓際の、後ろから3番目のショートカットの子。」 「みんなショートカットじゃん。どれもこれもみんないっしょに見える。」 「だから、窓際の後ろから3番目だって。」 「名前は?」 「まひろ。堀田まひろ。」 「ふうん・・・付き合ってるのか。」 「まだ、よく練習を見に来てて、前から可愛いなと思っていたら先月、あの子から手紙もらったんだ。」 「レギュラー外されたくらいか。」 「そういう言い方するな。」 「デートしたのか?」 「二人きりではまだ・・・今度の日曜日、練習が終わったら会おうって約束したけど・・・」 「日曜日って4日後じゃん。」 「無理だな。」 クレタは少しかぶせ気味に言った。さっきまで興味がないように壁にもたれて廊下で胡坐をかいていたのに、今は隣に並んでいっしょに女の子を見ていた。 「やっぱりか・・・」 「まちぼうけだな。」 「何か知らせる方法はないのか?」 「ない。おまえの友達が言うだろ。バカな喧嘩が元で落っこちましたって。」 「そんな言い方するな。」 「何か違ってたか。反省しろ。行くぞ。」 「おい、あの子に触ったらダメか。」 「未練が残る。やめとけ。」 「髪の毛1本でもいい。触らせてやってくれ。」 理玖は太のためにクレタの腕をつかみ行かせまいとした。 理玖の眼が本気だったから、クレタも断りづらくなってきて、少しだけならと妥協した。 「そっとだぞ。ムギュってするなよ。」
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