二、死んだのか???

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太は教室の中へ入り、その女の子の前に立つと、髪を2度撫でた。そして、十秒ほど顔を見つめて、涙を一筋流すと教室を出て、そのまま学校の出口に向かった。 しばらくは太の横には誰も並ばなかった。 「後の二人は、どこ行きたい。」 「僕・・・2つはダメかなあ・・・」 「ダメだな。時間ない。」 「俺いいから、ヒロトの行きたいところに連れて行ってやってくれ。」 「わかったよ。どこだ。」 ヒロトはクレタに耳打ちするとバスの乗り場に並んだ。相変わらずひとことの説明もなく無言で来たバスに乗り、2時間ほど乗って、そして降り十分程度歩いて、一軒の家に着いた。中では食卓を囲む父親、母親に中学生の男の子、小学校三、四年くらいの男の子と年が離れた幼稚園くらいの女の子が一人の五人家族。賑やかで、毎日が楽しくて仕方ないような幸せにあふれた家族がいた。 「アレ、ヒロトの親父だろ。」 「そう、パパの新しい家族。」 「え・・・どうして・・・旅行じゃなかったのか。」 ヒロトはガクンとくびを折るようにしてうなづき、 「パパとママは僕が小学校の時くらいに離婚して、パパが出て行った。」 「単身赴任だって言ってたじゃないか。」 「だってなんか、かっこ悪くって・・・それにママもかわいそうで・・・」 「ヒロトは平気なのか。」 「パパが幸せそうでよかった。パパの笑った顔は久しぶりだ。クレタ、行こう次。」 「おう。」 「ヒロト、いいのか?もう。」 「うん。平気。」 「平気な訳ないだろ。俺、親父に言って来てやるよ。」 太は窓枠に手をかけ、部屋へ乗り込もうと足をかけたが、制服の裾をつかんだクレタが、 「どうやって?おまえの声なんて届かないぞ。ヒロトがいいって言ってるんだから次行くぞ。」 平然として言い切り、クレタはまた何も言わずに先頭をドンドン進んだ。今回は一度振り返り、 「余計な事するな。」 窓から入ろうとしていた太を威嚇するように怖い顔を作った。けど、その顔には恐怖は一切感じず、諦めの悪い太と理玖はまだ窓をよじ登っていた。 「ホントに大丈夫。やめて!」 「ホントに、ホントにいいのか。」
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