三、戦うことになる

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「遅かったな。何か見たのか?」 クレタはまるで、自分の家に帰ってきたかのように、リラックスしてベッドに横になり頬杖をついて言った。 理玖は少しうなづくとコロッケののった皿を太の前においた。 「おおコロッケ。理玖のばあちゃんのコロッケちょーうめえんだよ。」 「え、なんで知っているの。」 ヒロトは太の顔を覗きこむとコロッケを1個取って横を向いて食べた。 理玖はジュースをコップに注ぎ、太の前に差し出して、今までに一度も言ったことのない言葉を言った。 「ありがとう。」 「なんだ、急に気持ち悪い。」 太は眉間にシワを寄せて怪訝そうに言ったが、理玖は言葉こそかけなかったが太を見つめる顔は笑っていた。 ヒロトとクレタはそんな二人を気にすることなく、無心で競うようにコロッケを頬張った。 お腹いっぱい食べた四人が、ベッドに持たれ並んで座って、少し眠気もあっりボーっとしていた時、まるで映画でも、見るようにあの日のヒロトが部屋へ入って来た。 あの日・・・それは、一緒に太のサッカーを見に行ったあの日だ。 ヒロトはタンスの引き出しを開けて一番奥にしまってあった、あの派手なブルーのシャツを見つけて笑った。 いっしょに袋に入っていた白いパンツと並べてなおさら笑い、 「コレならグラウンドにいる太にもはっきり見えるわ」そう笑い続けた。 「ヒロト・・・」 理玖も太も隣に座っているヒロトの顔と、目の前にいる幻影のヒロトを交互に見た。 それはまだまだ続いて、サッカー場でも、太の様子を伺いながら理玖の手をマッサージし出した。 ヒロトのその時の表情、心の声も聞こえてきた。 ヒロトは爪を噛みながらがたがた震えはじめた。 【絶対、太は僕らを見ている。理玖と仲良くしていたら、絶対やきもち焼いてイライラするはずだ。楽しい。太がイライラしてミスしてサッカーやめちゃうかも。おもしろい!】 「嘘だ。こんなの嘘だよ。僕、こんなことしらないよ。」 「わかってるよ。ヒロト、こんなことヒロトが思う訳がない。幻覚だよ。」 太はヒロトの手を取ってポンポンと二度、軽く叩いた。 「太…僕…サッカーやめちゃえとか思ってないよ、僕。」 「わかってるよ。ヒロトの事は俺が一番よく知っているから、大丈夫だって。」
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