三、戦うことになる

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しかし、時期にヒロトの手を握っていた太がのけぞって大声で叫び出した。 何か見てはいけないものを見てしまったような見たくないものを見てしまったような、ひどく恐怖に怯えて悲鳴をあげて部屋の端っこまで転がり机と壁の角にめり込むように逃げた。 その時、何が起きていたかというと、太が握っていたヒロトの手が肘からどんどんとイボガエルになってきた。 自慢の白くて細長いきれいな指の間に水かきができて、色もどぶのような緑とも茶とも区別がつかないような色に変わり鯖の皮のような奇妙な模様ができたかと思うとぼつぼつといぼが出来はじめ、みるみると指かいぼかわからないほどに膨らんだ。 太もカエルは子供のころからずっと大嫌いだった。 嫌いの始まりは、子供のころ野球チームに所属していて、球拾いをしに草むらに入り、カエルに飛びつかれたことがトラウマで野球を辞めた過去があった。 それは誰にも言ってないことで、いつも強がっていて誰にも弱音をはかない太の唯一の弱点と言ってもいい。 どうしても、どんなことがあってもカエルだけは克服できないのだ。 ヒロトもまたカエルは大嫌いで、小学校二年生の時、一人で下校していた時にいじめっ子の上級生にカエルをたっぷり浴びせられて道で失神し、大事件になった。 「きゃー、何とかして・・・・」 泣き叫んで床に手を叩きつけたりタオルに手をこすりつけたりして暴れているヒロトを何とかしてあげたいのは山々だったが、理玖もまたカエルは苦手で、とても思い出したくない過去があった。 小学生の理科授業。 ちょうど5時間目、その時はカエルの解剖だった。 その生臭い匂いに耐え切れず、思わずその場で吐いてしまい、しばらく同級生に「理科で吐いた子」と呼ばれたつらい思い出があった。 「ヒロト・・・ちょっと落ち着こう・・・な・・・」 そう声をかけるのが理玖の精一杯だった。 「じゃあ、何とかしてよこの手、これ幻覚なの・・・なんなの・・・」 そんな中、大声で笑うのはクレタ一人だった。ベッドの上で一人腹を抱えて大笑いしていた。 「おい、お前、何でそんなに笑うんだ。何とかしてやれよ。」 「だから、何度も言っているだろ。うそをついたり言い訳したりしてはだめだって。 なんでダメだってことをやるのかな・・・・」 「ヒロトがあんなこと、思うわけないだろ。いつも俺たちのことを大切に思ってくれている仲間なのに。」
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