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「仲間ね・・・・・これ、まだ続くぜ。もっと見るか?」
今度はスマートフォンを理玖が買ったときの幻影が映し出された。
使い慣れないスマートフォンが”ピンピン”と音が鳴り続け、気になって勉強できなくて苦しくて、電源を切った。
するとヒロトはどうやったら理玖が自分に注目してくれるかを考えて、マスクを着けて登校し、わざと理玖の前にその姿で現れた。
作戦は成功、理玖は勉強できず試験も最悪の結果となった。
「違う・・・違うんだ、理玖・・・僕は・・・」
「ヒロト、もういいよ。すんだことだ。本当のことをいいな。
これ以上カエルになったら、本当にヒロトに近づけなくなっちゃうよ。」
「僕・・・理玖が遠くに行っちゃうような気がして・・・つい・・かまってほしくて・・・」
「…そうか・・・」
「おまえ、許せるのか。」
「許すも、許さないも・・・あの時のヒロトは全部が嘘じゃないと俺は信じているんだ。物音ひとつしない家に、空っぽの冷蔵庫、今思うと、ヒロトはたぶん気が付いてほしかったんだと思うんだ。」
「へー。やっぱり優等生は違うな。」
「優等生だからじゃない。友達だからだよ。」
「理玖・・・ごめんなさい・・・・」
「じゃあ、おまえ、これも許すのか。」
それはあのステンドグラスにダイブしたラストの日。
ヒロトが理玖を迎えに来る前に太とも3階で待ち合わせしていた。
そして、事件になったあの踊り場で鉢合わせする計算をしていた。二人が喧嘩をするのは間違いない、そして止めに入って、三人で講堂へ手をつないで行くとヒロトの頭の中では計算されていた。
「その計算が間違ってお前らは今こんな状態になった。あの時ヒロトがあんな馬鹿な計算をしなければ、あそこで鉢合わせすることもないし、今ごろお前らは普通にそれぞれの家に帰って晩御飯を食べているくらいの時間なんだけど・・・それでも許すのか。」
「俺は許す。太は?」
「おれは・・・ちょっと考えさせてくれないか・・・」
「太・・・ごめん・・・」
太はベランダに出た。空を見て考えていた。今まで自分が努力してきたこと、見てきた夢、夢が大きければ大きいほど叶わないショックは大きい。
「なあ、理玖。理玖は何になりたくてあんなに勉強していたんだ。」
「俺はスジ屋になりたくて・・・」
「なんじゃそれ?」
「ダイヤグラムを作る人だよ。」
「あ?余計わからん。」
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