四、まだまだ続く旅

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四、まだまだ続く旅

「どうしてまた理玖のばあちゃんちに戻った。」 「戻ったわけじゃない。メシを食うところがここ以外思いあたらないんだ。 仕方ないだろ それに寝床もセットだから探さなくてすむし。朝飯もあるしな。」 「俺達は、受け付けに向かっているんだろうな。」 「おう、それは大丈夫だ。ちゃんと方位磁針も持ってるし、地図だって・・・ほら。」 広げて見せたが、その地図は理玖達には理解不能だった。 大事そうに角を揃え、折り目を整えてたたみ、机の上に方位磁針と重ねて置いた。 「さあ、晩御飯を取ってきてくれよ。」 「またコロッケじゃねえだろうな。」 「お前が好きだと思ったから初日はコロッケにしてやったんだ。 今日は俺が大好きなやつだ。」 「なんだ、大好きなやつって。」 「とりあえず取って来いよ。取って来たらわかる」 理玖の背中を階段のほうへ「ポン」と押した。 階段を下りて店に行くと、今日も店の中で働く祖父と祖母の幻影が見えた。 今日見えた二人は少し若い感じがした。 店のカウンターの端にいたのは小学校の頃の理玖だった。 祖母にお弁当を作ってもらい、リュックサックに入れてもらっているところだった。 リュックを担いで手を振り店の外へと出て行った。 理玖は思い出した。 遠足の前日に母親が入院し、お弁当を店で作ってもらったんだった。 その弁当を持って父親の車で学校へ送って行ってもらった。 どうしてそんな幻影を見るのか、少し不思議だった。 カウンターの上には山のようなエビフライとタルタルソース。 それとお稲荷さん。 理玖は大きめのお盆にそれを乗せて二階へ運んだ。 「うわー!やったー!」 クレタは子供のように喜んでエビフライを手づかみでタルタルソースのはいった器を独り占めして食べはじめた。 太もそれに倣い、競うように食べ始めた。 理玖は一生懸命思い出していた。 祖母の弁当を持って遠足に行った時、何かとても特別な事があったはずだった。 「なあ、小学校の遠足で・・・」 「ああ、理玖と太が大喧嘩した。」 ヒロトがケラケラと涙まで浮かべて笑いながら話しを始めた。 「そんな面白い事だったか?」 「ごめん。笑っちゃダメだね。3年生の遠足の時の喧嘩が最高だった。 理玖のお弁当事件。」 「あー・・・」 理玖と太は指を指し、同時に声をあげた。
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