13人が本棚に入れています
本棚に追加
好奇心というなの感情でいっぱいになっている亜矢が、真剣な表情で種明かしをせがんできた。
「どうしよっかなー。普段は教えないんだけど、せっかく付き合ってくれたわけだし、特別に教えちゃおうかな。でもその前に……」
そう言って亜矢のグラスを指差した。
「あっ!? 飲み終わっちゃいましたね。でも聞きたいからもう一杯だけ、飲もうかな」
オレンジの腕時計に視線を向けて、照れた表情をしている。
亜矢の腕時計の針は22時を指していた。隣に席を移してまだ30分くらいしか経過していなかったが、側から見た俺達はとてもさっきまで他人だったとは思えない程仲良く見えていた。
「時間は大丈夫? 大丈夫ならもう一杯は、付き合ってくれたお礼として奢らせてください」
「時間は大丈夫です。今は春休みなので明日は講義もないですし。でも悪いですよー。ゲームに付き合っただけですし」と亜矢は申し訳なさそうに言った。
「いいんだって! 本当に助かったんだから! ほんの気持ちだからね」と今日1番の笑顔を見せて言った。
「それならお言葉に甘えて……拓海さんの飲んでるやつはなんですか? 美味しそうだなって気になってたんです」
亜矢も笑顔を見せている。そして本人も気づいてないくらい自然に、俺の事を名前で呼んだ。
最初のコメントを投稿しよう!