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「これ? 実はちょっと特別なんだよねー。でもご馳走するなら丁度いいかも! 美味いから飲んでみてよ。マスターこれ亜矢ちゃんに一杯お願い」
自分の飲んでいるカクテル風のオレンジジュースに指を指し、マスターに注文をした。
「確かにご馳走するには丁度いいな。実はこれオレンジジュースをベースにしたカクテルなんだけど、拓海の実家から大量にオレンジジュースをもらってそれを使用してるんだよ」とマスターが説明をした。
カクテルを作るシャカシャカという音が、店内に少し響く。
ふと気付けば他には誰も客がいなかった。あのどうでもいい話しをしていたカップルはいつのまに帰ったのだろう。それに気づかない程、亜矢とのゲームに集中していたのか。
「俺の実家、愛媛のみかん農家なんだよね。それでオレンジジュースが大量に送られてきて飲みきれないからマスターに提供してるんだ。そのかわりこのカクテルだけは俺はタダで飲めるって訳! 良い条件でしょ?」
カクテル風のオレンジジュースを一口飲みながら得意げに言った。
「へぇー! 拓海さんの実家みかん農家なんだぁ。てかその条件羨ましすぎー。タダ飲みし放題じゃん! ずるいよー」
両肘をテーブルにつき、頬を少し膨らませながら話しをしている亜矢の目の前に、亜矢用に可愛く飾り付けされたカクテルがさっとだされた。
俺のとは違い当然これにはしっかりアルコールが入っている。
「はい。どうぞ」と言ったマスターは粋な計らいをしたくせに相変わらず低い声だ。サングラスの奥の目はどうなっているんだ? そんな事をふと思った。
「うわぁ、可愛い! それに美味しそう。頂きます」
カクテルを見るその目はキラキラしていた。店内の薄暗い照明とグラスの光が反射して尚更そう見えた。
そして凄く嬉しそうに口をつけた。
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