松田亜矢①

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松田亜矢①

 カウンター席に座り、オレンジジュースを飲んでいると、奥のテーブル席にいた若いカップルの話が聞こえてきた。 「今度さー、福井に旅行に行こうよー! あたし海が見えるホテルがいいなぁ」    こんなどうでもいい話だが、メンタリストをしていると耳に自然と入ってくる。色々な情報を収集しようと五感が常に鋭くなっているからだ。  すると ーーカランカランーー  バーの扉が開き、マスターが「いらっしゃい」と客に声を掛けた。  マスターの声に反応し扉に目をやると、2人組の女性客が入ってくる。  顔つきや服装、髪型や化粧などを見る限り女子大生で間違いなさそうだ。  2人はカウンター席に座ると 「あたしマスターおすすめの飲みやすいカクテルをください」 「じゃああたしも」と注文を済まし、会話を始めた。  2人の女子大生はお酒を飲みながら、彼氏やバイトの愚痴、大学のゼミの愚痴などを我こそは1番の不幸者だと言いたげにこぼしている。  しばらくすると1人の女性に着信があった。 「もしもーし、なぁにぃ? 今は亜矢とバーで飲んでたよ。えっ? 今から?? わかったよー。今から行くねー」    困ったように言っているが、声のトーンが一段高くなっているところを見ると間違いなく嬉しいのだろう。    電話を切ると、もう1人の女子大生に言った。 「ゴメン亜矢! 彼氏が近くにいるらしくてどうしても会いたいんだって! この穴埋めは必ずするから許して。てか駅まで送るけど、どうする?」    その言葉を聞いて亜矢と呼ばれている女子大生が答える。 「えーわかったよー! なんだかんだラブラブじゃん! 今度なんかおごってよね! うーんと、あたしは今入ってるお酒飲んだら帰るわ。2人の邪魔しても悪いからね」  亜矢の言葉を聞いて、1人の女子大生は申し訳なさそうなそぶりを見せながらも、足を弾ませ店を出て行った。  するとマスターが、俺にアイコンタクトを送ってきた。そして人差し指を1本立てる。 「この子で10万円ね。まぁ余裕かな」と俺はポツリ呟いた。
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