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「―その確率は高ぇ、旦那はヤツらの仲間も斬ってる。
それに、傷を負わせた右手のことも考えて有利だととるはずだ」
「では、夏侯惇殿の配置をすこし変えておきましょう。あとの作戦は大至急こちらで練ります」
「よし、任せたぜ。俺はまた少し回ってくる」
―チャリ。
振り返り背中を見せる甘寧に、少し息を吐いた。
「……さすがに、落ち着きませんか…?」
銀と、昔の仲間と対峙して。
前にも訊き、そして後悔した問いだったが、今となってはその質問はそれ以上に意味を含んでいた。
「………さあな。
だが軍はどうにか馴らして纏めておきてえ」
甘寧の返答の声は、低い。
「……」
「…陸遜。俺ら軍ってのは戦の時ほどまとまってなきゃならねえモンだ、そうなんだろ?
そうじゃねーのは軍とは言えねえ、黄巾賊だろーが軍人だろーがどいつもこいつもやってることに大差はねえ。
昔の俺らと…そこらの賊と一緒にされねーために、必死こいて大義名分とやら掲げて一つにまとめなきゃなんねえ……それが軍だ」
これは甘寧なりの“軍”というものの解釈なのだろうか。
常に闘争の中に己の所在を見出だしてきた彼からの視点ならば、あながち間違いってはいないのかもしれない。
しかし甘寧がこれほどこだわっている何かが、陸遜にははっきり見えてこなかった。
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