彼方の旅路と

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「……全く…鈍いな、夏侯の」 蒋欽がしれっとして顔を上げる 夏侯惇は眉間を狭めた 「何が言いたいのだ白々しい。俺に用があるならばさっさと言え」 そしていい加減ひとりにさせろ。 「むう、鈍いと言っておる。せっかく情報を仕入れてやったというに」 「情報だと?」 「…ふぅ、蒋欽殿。回りくどいのは止めよう。夏侯惇、お前の知りたがっていた情報……――お前の従兄弟の件だ」 呂蒙の言葉に、今度はそちらへ目を見張った。 「……まさか……淵の話しを…!?なぜ今さら…!」 「まあ待て、夏侯の。座れ」 蒋欽の制止に、夏侯惇は盆を卓に再び置くだけに留めた。 ……何を考えている。 俺に情報を教えるのは命令違反ではなかったのか? 昨夜もそれが原因で、朱然たちは解雇まで言い渡されていたというのに… もしこんなところを誰かに聞かれたら―― 「……警戒せずとも良い。貴公に情報を教えようというのではない、私は“呂蒙殿”に情報を教えようとしているのだ。 ……貴公は、まあ向かいの席で“偶然”聞いてしまったといったところであろう」 「………!」 蒋欽の囁くような提案に、夏侯惇は声を落として言った。 「……―なぜ教える気になった、蒋欽」
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