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「まったくとんでもねー失態だ。前代未聞スよ、戦のまっただ中でジジイごときに君主をいいようにされるなんてのは」
「然り、張昭の云うことは確かですよ程普。左慈とやらの件はすでに笑い話の域を超えています、我々で即刻解決すべきでしょう」
張昭に続いて、そのとなりを歩く赤茶けた長髪の男が言う
諫められた程普はニヤリと口を歪め男の方をふり向いた。
「――されども珍しいもんは珍しい。『仙人』なぞそうそう目にかかれるものではない。ましてやこの手で斬るとはなァ」
「おや、それはそうでしょう」
長髪の男がニコッと笑う
―…否、男は常にほほ笑んでいた。
張りつけられた女性的で柔和なその笑みが、いま一層深くなっただけだった。
「その男……民草相手の商売で『仙人』と名乗る阿呆うとはわけが違います。国を惑わし敵対してなお自称が『仙人』なのです……ふふ、ケタ外れの阿呆うですな。
恐らくは奇人変人の類いでしょう、程普がめずらしく思うのは当然のこと」
程普の鋭い瞳が細くなる
戦化粧で紅く塗られた目もとに、数本のしわが現れた。
「…そうかそうか、主は『仙人』を虚言ととるのか、朱治よ」
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