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「―よし、虎痴。それにコレをつけてみろ。さらに強くなるやもしれんぞ」
鎖を拾い上げ楽しそうに笑う曹操
酷くうなされていた昨夜の面影は、ない。
陽の当たる丘の上、こうして緑の中で威風堂々佇んでいる様はいつもの魏の君主、曹操であった。
一同が健全そうな主の姿に安心していると、張遼が遠くを見つめて言った。
「…おお、あれは城ですかな」
「らしいな。あれは何という城かな」
「え~っと…ありゃ確か…」
許チョが前に乗り出した
「ん~~?なんだぁ?変だぞぉ、あの城……」
―……ブーン…
「!」
―ふと、曹操が耳もとで聴こえた羽音に目を向ける
「………蝗(イナゴ)か…?」
草むらにとまった蝗へ、張遼が疎ましそうに目を細める
「……蝗…。此処に来るまでで飛蝗は見ませんでしたが………もしかするとここらの民は飢えているのかもしれませんな。それで野盗の類が増えているのか…」
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