彼方の旅路と

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  「……良い、主も儂も軍(イクサ)人よ。性根は変わらん。されど周郎はなかなか」 朱治が歩きつつ首を傾げる 「軍師には軍師の、将には将の悩みがありますぞ」 「否。彼奴は武勇知略ともに確かだ。故に軍師にも将にも成り切れぬ……司令とすれば鬼才だが」 「おや、随分買っていますね」 「―カハ、それはそうじゃ、先代の置き土産よ!」 半ば関心なさげにしていた程普がこめかみから手を離す 「しかし天賦の才が幾多有るのも考えものよ。何事も己で済めば何物にも気付かぬ…―して、いつか壁に当たれば砕けように」 「然り、これからですな周瑜は。才に溺れるか、否か」 「カハッ」 ニヤリとして大男は謁見の間の扉に立ち止まった。
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