リアは働きます。

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 リアは働きます。  毎日まいにち、朝から晩まで働きます。  朝は太陽がのぼるまえ、まだ暗い空に星がまたたくうちから起きだして、小さなボロい魚油のランプにたよりない細い明かりをともすと、薄暗い大きなボロい家畜小屋にひとりで出かけていって、ウシたちとヤギたちとヒツジたちとブタたちとニワトリたちとアヒルたちと食用オオオズミたちとトゲアリハネナシ食用トカゲたちと、たいひの山の食用フトミミズたちの世話を、たったひとりでやります。  それぞれの汚れた寝床を大急ぎでそうじして、それぞれの新しい寝ワラを山もりにしてやって、それぞれの新しいエサを山盛りにしてやっていると、東の空が明けはじめて、水平線のあたりがぼんやりと明るくなってきます。  それからウシたちとヤギたちとヒツジたちのメスから乳をしぼって、それぞれの瓶に入れてしっかりとフタをして、市場に持っていくまでのあいだ暑さで腐らないよう、外にある井戸の冷たい水の底に、きちんとつるしておきます。  そしてそのまま裏庭の井戸と母屋のあいだを往復して、古い傾きかけた朽ち木の家の、古くて汚い石とレンガの台所の、これだけは気をつけて毎日洗っているきれいな木製の大桶がいっぱいになるまで、すがたをみせはじめた真夏の朝日の光と熱を真正面からまともにうけて汗をかきながら、うんうんと運び、はぁはぁと息を切らせて急いで戻って、何度も何度も運びます。
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