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第一章 この退屈な世界
ドアを開けると、照りつける太陽が異様にまぶしく感じた。
重いまぶたをこすりながら携帯を片手に歩いていると、サラリーマンとぶつかった。
「どこ見て歩いてんだよ。」
「すみません。」
申し訳なさそうに頭を下げたが、サラリーマンは何かぶつくさと言いながら不機嫌そうに歩いていった。
蛹から孵った蝶が蜘蛛の巣に引っかかるのが横目に見えた。
「おい早く行こうぜ。」
「待ってよ。」
自転車に乗った青年とその後を走って追う女性のスーツ姿の二人組が、僕を瞬く間に追い抜いていった。どうしてそんなに大学の入学式なんかが楽しみなんだろう。
駅の階段を上がっていると、後ろから駆け上がってくるサラリーマンと肩がぶつかり、その衝撃で携帯を落とした。
落とした携帯を拾うと、画面は綺麗に割れ、電源はつかなくなっていた。
顔をあげると、そのサラリーマンがギリギリのところで閉まる電車に入り込むのが見えた。
電車の中で、ランドセルを背負ったまま椅子に座っている小学校低学年くらいの少年が単語帳のようなものを開いて勉強している様子に少し驚いた。
次の乗車駅で、これでもかと言わんばかりの人が詰め寄せてきた。
初めての通勤ラッシュに若干の感動を覚えながらも、OLの香水の香りとサラリーマンのワキガが混じり合った臭気に吐き気を催して口を片手で抑えた。
満員電車の中で新聞を広げるひと、化粧を整えるひと、携帯ゲームから目を離さないひと、泣き出す赤ちゃんをあやす若妻と、それにイライラするサラリーマンを見て、何故か少し嫌な気分になった。
「すみません。通して下さい。」
道をつくろうとしな満員電車の住人を掻き分けながら、やっとの思いで電車から降りた。
他の学生に追い越されながらも、ゆっくりと駅の階段を上がっていると、後ろから金髪の学生が駆け上がっていくのが目に止まった。
駅の出口から指す強い光にその学生が吸い込まれていくように見えたが、眩しくてすぐに目の前に手を当てた。
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