憧れの存在は身近に

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 翌日、私は前のように学校で曲と詞を書いていた。今までより、とっても楽しくて楽しくて、授業の開始も分からなくなるほどで、何回も先生に注意された。  お昼休みになって、購買へお昼ご飯のパンを買いに行こうと階段を駆け下りていたところで、上から聞き覚えのある声に呼び止められた。 「白葉ちゃん!」 「聖王先輩?」  先輩がこちらにくると、スラックスのポケットから何かを取り出して、 「なんですか?」 「てぃらんくん知ってる?」 「は、はい! ファンです! SNSの生放送も毎回見てます!」 「ほんとに! 俺、ライブのチケット応募して当たったんだけど、予定が入っちゃって行けなくなっちゃったんだ」  先輩も、てぃらんくんのファンなんだ。軽音部だからバンドが好きだと思ってた。 「私も、応募しようとしたんですけど、いろいろあって応募できなかったんですよね」 「それならちょうどいいね! お金は今度でいいから、俺の分まで楽しんできて!」 「あ、ありがとうございます……」  先輩は私にチケットを渡すと、上の階へと行ってしまった。運良く当たったチケットを、こんな簡単にもらっていいのかな? でもせっかくなんだから、先輩に感謝しつつ、先輩の分まで来週は楽しもう。
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