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出店者仲間にその話を持ちかけてみれば「オレたちのコンテンツに魅力がないだけ」だの「ただの僻みでしかない」と言われるばかり。
そうなのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。
頭の中で数々の「なぜ?」が生まれ、答えを得ないまま消えていく。
そしてそのうち疑問すら抱かなくなって、この境遇に慣れきってしまうのかもしれない。
いっそそうなってしまえば楽なのだろうが……。
やめよう。
やめてしまおう。
そう考えた瞬間、心がスッと軽くなった。
こんな想いを抱きながら続けても、何も良いことはない。
惜しむ人の居ない店だ、今から閉店にしてしまっても誰も困らないだろう。
手早く制服を着替え普段着に戻り、まだ昼の1時だというのにシャッターを閉ざしてしまった。
きっと2度と開くことはないだろう。
商店街の入り口へ足早に向かう。
何度も行列の横を過ぎていく。
前のオレだったら苛立ちや羨望の気持ちが湧いたのだろうが、もうオレは「関係のない人」だった。
おびただしい列を作って並ぶ人たちの中には、混雑具合に文句を言っている者や、サービスに対して不満を口にするものが少なくなかった。
そんなに文句があるなら別の店も探してみたらいいのに。
そう思っても口には出さず、商店街を抜けた。
しばらく歩いて振り返ると、ようやく見慣れてきた入り口のアーチが見えた。
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