回顧 高一の夏 初めての友達。そして変わり行く僕らの気持ち

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海斗の父親は幾つもの会社を経営しているらしく、母親とは政略結婚だった。 若い頃から遊び人だった父親は結婚前から色んな女性と付き合っていたらしく、亮平の母親もその一人だった。 母親は体が弱く、海斗が小学校に上がって直ぐに亡くなったらしい。 病弱な母親に父は一切構わず、その葬儀すら秘書に全て任せて、なのに喪主の挨拶では如何にも大事にしていたように涙を見せる父親を、海斗は激しく嫌悪した。 十歳になった頃、まだ年若い女性が後妻に入った。 六歳と四歳の兄妹を連れて。 計算上母親の生前に生まれたのは間違い無く、それだけでも幼い海斗にとって許せない事だったのに、若い継母は我が物顔で振る舞った。 彼女にとっては先妻の長男である海斗が邪魔だったのだろう。 兄妹とは特に確執も無かった代わりに、継母が彼らの交流を嫌がり特別仲良くも無かった。 実母の親は父親の会社の重要な取引先で、それ故に跡取りは海斗と決まっていたけれど、海斗にはそんな気は初めから無かった。 十一の頃から家には滅多に帰らず、夜遊びしたり転々と泊まり歩く事が多くなった。 喧嘩しようが夜遊びしようが、ちょっとした事件程度なら直ぐに金で揉み消されてしまう。 ある程度の成績さえ維持していれば、父親は何も云わなかった。 中学の時に一度、反抗心から模試を全部白紙で出した事がある。 学校から連絡が行き、珍しく家に帰って来た父親に「恥をかかせるな」と散々殴られ蹴られ罵倒された。 要するに、父親にとって一番大事なのは世間体だけだった。 外に子供を何人作ろうが、ちゃんと養育費を支払うのも面倒事を避ける為。
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