回顧 高一の夏 初めての友達。そして変わり行く僕らの気持ち

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「んーっ、終わったぁ!」 大きく伸びをすると、目の前に蜂蜜とレモンの入ったアイスミルクが置かれた。 疲れが取れるようにって、海斗特製のアイスミルクは僕のお気に入りだった。 「お疲れ。最近調子いいな。仕事も増えてるみたいだし」 向かいに腰掛けて、描き終えたばかりの原稿を海斗が手に取る。 これももういつもの事で、海斗は僕の原稿を一番最初に見る読者だった。 「あ、そうだ。明日街まで買い物付き合ってくれないかな」 読み終わるのを見計らって声を掛けると、原稿を茶封筒に丁寧に入れながら海斗が不思議そうな顔をした。 「いいけど……珍しいな。お前が街で買い物なんて」 「担当さんに云われてさ。安い電話機買わなきゃって」 僕は携帯なんて持っていない。 家電はあるけど、僕が生まれる前からの物で、留守電機能なんて付いていない。 実は連載が思ったよりも反響が良いらしく、別冊での読み切りだけじゃ無くて、挿絵の依頼なんかも来ているらしかった。 別の出版社からの絵のオファーもあるらしく、在宅時しか連絡が付かないのは今後困るからと、せめて留守電か携帯を持ってくれと、つい昨日頼まれた。 「ならスマホの方が良くね?激安プランとかあるし、家電に留守電付けたって、結局居る時しか聞けねーだろ」 「んー、学校以外引き籠もりだし、無駄じゃない?」 「や、でも休み時間とかに確認出来るしさ。…あ、未成年って保護者要るんだっけか」 「それは出版社名義でやってくれるんだって。欲しいのが決まったら注文してくれるって。電話代も何か、経費で落とせるらしい」
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