回顧 高一の夏 初めての友達。そして変わり行く僕らの気持ち

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奥の一角には幾つもの自販機と椅子とテーブルが並んだコーナーがあり、そこに座ってやっとほっと息が付けた。 「何か飲み物買って来る。軽食もあるけど、どうする?」 「飲み物だけでいい」 学校以外滅多に外出しないからって、自分の体力の無さに不甲斐無くなる。 海斗の背中を見送って、初めて入ったゲームセンターの中を視線を巡らせる。 ふと、一箇所で視線が止まった。 大きなガラスケースの中に沢山詰め込まれたぬいぐるみ達。 クマやウサギが可愛らしいドレスやリボン、妖精の羽などを付けている。 「何か気になるのあったか?ああ、UFOキャッチャーか」 飲み物を買ってきてくれた海斗が、僕の視線を辿って笑みを浮かべる。 「UFOキャッチャー?」 「ああ。ゲーセン初めてか?あん中のが景品なんだ。欲しいのか?」 「いや、瑠璃が好きそうだなって」 「そっか。ちょっと此処で休んでろ」 そう云うと、海斗は財布から小銭を出してそのぬいぐるみ達の所へ歩いて行った。 オレンジジュースを飲みながら見てると、何やら彼方此方の角度からガラスの中を覗いて、前面に小銭を入れた。 中を見ながら盤面を操作すると、音楽が鳴り中に吊り下がったアームが動き出す。 それが器用にぬいぐるみを引っ掛けて、ぽとりと落とした。 へえ、ああいうゲームなんだ。 そう思ってる内に、あっと云う間に三つのぬいぐるみを取って、箱の横に下がっていたビニール袋に入れて海斗が戻って来た。
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