回顧 高一の夏 初めての友達。そして変わり行く僕らの気持ち

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海斗が袋から出したそれをテーブルに並べて、にっと笑う。 魔法使いのクマ、お姫様と妖精のウサギ。 可愛らしくて如何にも瑠璃が好きそうだ、と思わず頬が緩む。 「おにーさんすごーい」 高く甘ったるい声に振り向いた。 そこには多分そう歳は変わらないだろう、化粧をして派手な服を着た女の子達が居た。 「一発で取っちゃうなんてすごいー。あたしなんて千円入れても一個も取れなかったのにぃ」 海斗がやってたのを見ると簡単そうに見えたけど、そんなに難しいのか。 「ねえねえ、あたしにも取ってくれないかなぁ?」 「悪ぃけど、大切なヤツの為に取ったんだ。自分らでやってくれ」 あ、抑えてるけどこれ、海斗かなり機嫌悪い。 「そんな事云わないで、ねぇお願いー」 甘ったるい喋り方、媚びを売るような上目遣い、そして、海斗の腕に絡みながらさり気なく胸を押し付ける仕草。 ───気持ち悪い。 何だこれ。 胃の辺りがムカムカする。 さっきまで気にならなかった香水の匂いまでが鼻に突いて、吐き気がする。 何か知らないけど、苛々する。 「ねぇ、弟クンも一緒に遊ばない?見てるだけじゃ退屈でしょ?」 もう一人の女の子が僕の肩に触れた瞬間。 「触んな!」 海斗がその子を睨み付けて低い声を上げ、纏わり付いていた腕も振り解いた。 「俺らに構うな!男引っ掛けに来たんなら他当たれ!」
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