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「な、何よぉ、感じ悪い!」
その迫力に、その子達は文句を云いながら離れて行った。
大きく溜息を吐いて、海斗が僕の隣りに座る。
「ごめん、南。大丈夫か?」
気遣うような声。
だけど僕は、さっきの子が絡み付いてた腕から視線が離せずにいた。
眉間を指の腹でぐりぐりと押されて、はっとする。
「南、怒ってる?」
云われて、自然と眉間が寄ってた事に気付いた。
「や、別に怒ってなんか…。それより海斗、役得じゃん。今の子胸大きかったし」
わざと冗談ぽく云えば、むっとした顔の後に何か思い付いたようにはっとして、にやにやと見つめてきた。
「もしかしてさ、妬いてくれた、とか?」
「ぇ……はあ?!」
慌てて手元のオレンジジュースをごくごくと飲んで。
「ばっ、僕の事弟なんて云うから怒ってんの!!誰が妬くか馬鹿!」
否定する僕にははっと何故か嬉しそうに笑って、大きな手が頭を撫でる。
僕は朱くなった顔を隠すようにオレンジジュースを飲み干した。
妬くなんて。
けどさっきのムカつきもイライラも、どうしてなのか理由が全く分からない。
海斗と一緒に居るようになってから僕は、初めての感情に振り回されっ放しだった。
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