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「明日だったよな。晴れるといいな」
「……うん」
一年が過ぎて貯金も結構貯まった。
色々調べて海斗と足を運んで、海の見える小高い場所にある霊園に決めた。
彼方此方に季節の花々の植えられた公園のようなそこの、桜の樹の横を選んだ。
近くには銀杏や楓などもあり、四季折々の景色が楽しめる。
その殆どを家の布団の中で過ごした瑠璃。
近場への旅行すら行けなかった祖母ちゃん。
海も山もあって花に囲まれて。
此処ならきっと、寂しくないだろうと思った。
「遅くなってごめんね」
墓石には白い石を選んだ。
二人の笑顔を思い出せば、一般的なグレーや黒は違うと思ったから。
空は蒼く澄み渡り、早咲きの満開の桜が僅かに風に揺れて、木漏れ日が真新しい白い石をきらきらと照らす。
正面には空の蒼と溶け合うように、穏やかな波が光る碧い海。
何も出来なかった自分が情けなくて悔しくて、ただ歯痒い思いだけを抱えてた日々。
やっとあの狭い部屋から連れ出してあげる事が出来た。
「気に入ってくれるかな」
「……きっと喜んでる」
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