回顧 高ニ高三 幸せ過ぎて

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この頃にはもう、僕は自分の気持ちをはっきりと自覚していた。 隣りに居るのが当たり前で、友達とは違う、誰よりも何よりも大切な人。 海斗が笑うと僕も嬉しくて。 見つめられる度に、触れられる度に心が体が甘く騒いで。 だけどその想いの一方で、現実を思う冷静な自分も居た。 僕はいい。 身内なんてもう誰も居ないし、進学はせずに家の中でずっと漫画を描いていくだけだから。 けれど海斗はきっと進学して就職して、普通の世界で生きて行く。 男女が恋愛してやがて家庭を持つのが当たり前の、そんな“普通”の世界で。 海斗がどんなに僕を甘やかしても、愛してると繰り返しても、いずれ普通の世界で生きて行く内に想いは変わるだろう。 それが当然なのだから。 でもそれでいい。 例え高校時代だけの何時かは思い出に変わる日々だとしても、僕にはそれだけでいい。 海斗は僕に大切な事を教えてくれた。 沢山の愛情を注いでくれた。 だから何時かは離れて行くのだとしても、僕はもう傷付いたりなんかしない。 ただ海斗が幸せに生きてくれれば、それだけでいい。 だからせめて。 一緒に居る今だけは。
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